ある晴れた朝のこと

先天性の心疾患と内臓奇形をもつ息子のこと

眼科巡りの旅

 

生まれてから約2ヶ月、息子は病院を退院して家に帰ってきた。毎日一緒に生活するようになって、私は息子の左目がたまにぐぐーっと中に寄ることが気になっていた。

でも、乳児の一時的な斜視はありがちなんだとかで、4ヶ月の集団検診で見てもらった時も、一瞬だけ見て「そうは見えないけどね」とばっさり斬られてしまった。

6ヶ月まで気になったら眼科に行ったら?と言われるも、6ヶ月は息子の2回目の手術。

当時は在宅酸素もしていたのと、6ヶ月頃になると斜視が気にならなくなってきたため、保留にしていた。というか酸素でいっぱいいっぱいで、そこまで気が回らなかった、が正しい…。

 

でも、息子が10ヶ月になったあたりで、今度は外側に黒目が流れるのが気になってきた。

外出中、どこを見ているわけでもなくぼーっとしているとき、眠い時、ぐぐぐっと外側にズレていく。

その頃にカメラを買い換えたので、余計に息子の目線を気にするようになったというのも、気になった要因だと思う。

 

そんな時に10ヶ月検診があった。

詳細は以前に記事を書いたけれど、病院近くの小児眼科を紹介してもらった。

 

個人病院眼科初診

雰囲気の良い眼科だった。

夏休み中のキッズスペースは小学生でいっぱいだったため、息子は私に抱っこされていたけれど、眠くてぐずぐずしていた。

寝かせちゃおうかなーとうろうろしていたら、受付の方から「赤ちゃんの場合、詳しく診察するために目薬を打ってから昼寝をさせてくださいとお願いすることがあるので、出来れば診察前に寝かせない方が良いかも」とお話があった。

こういうのはとても助かる。

あとから言われても、一回起こされた息子はもう意地でも寝ない。

 

しばらく待って、視力検査があった。

右目は順調だったが、左目、正しくは右目を隠されると激しく暴れた。

先生が上手にやってくれるからとのことで、とりあえず保留にしてもらって、診察へ。

 

普段はあまり気にならないが、ぼーっとしているとき、眠いときに黒目が外に寄ること

4ヶ月頃までは内側だったが、この頃は外側であること

を伝えると、

 

確かに、今はあまり気にならない(緊張で覚醒してた)。ぼーっとしてるときだけ出てくる斜視があるから、それではないかと思う。

1日のうち、半分以上が正常であれば、とりあえず視力や視野には影響を受けず、手術適応にもならない。治療もない。

それよりも、目を見せてもらうと左目が明らかに白っぽい。視神経に萎縮があると思う。今のところ視力の差はあまり無いように見えるが、また2週間後に来てもらって、その時詳しく見たいと思う。

視力に差がある場合、良い方の目を隠すと嫌がる。右目を隠してどう反応するか見て欲しい。

また、斜視の場合はフラッシュを炊いて写真を撮った時、黒目の真ん中がズレて写るから、試しにやってみて欲しい。

 

 

ということで、よく分からないまま終了。

もう治療、手術という言葉に慣れすぎていて、逆に「治療法はない」という言葉にショックを受けた。

あと視神経萎縮ってなんだ?と呆然としていた。斜視だけじゃないの?どういうこと?

 

ちなみにフラッシュは、私のiphoneだとフラッシュ→撮影の時間が長すぎて全然だめだった。

 

 

あと右目を隠すと、視力検査の時と同じく、ものすごく嫌がった。

そして私は『視神経萎縮』について検索し、たくさんのページを見ては、視神経は回復しないという記述を何度も見ては絶望を深めていた。

どうしてもっと早く見つけてあげられなかったんだろう。もっと早く、眼科を自分で見つけていけば良かったのに。7-8ヶ月検診を、退院直後を言い訳にサボらなければ良かったんだろうか。

 

個人病院眼科(2回目)

今回は瞳孔を開いたままにする目薬をさしてお昼寝させてください、とお話があったので、目薬3回もさされて激おこの息子を宥め宥めてなんとか寝かせた。

お昼寝用の小部屋があって、真っ暗な中に小さな灯り。母の方が寝たかったよ…リラックス…(ギャン泣きする息子を抱えながら)

朝寝させずに来てよかった…。

息子をどうにかこうにか寝かせたあと、先生を呼ぶと、目をそっと開いて何か機械で測定しているようだった。

すぐに結果は出て「もう起こして良いよ」と言ってもらったものの、そんな短時間で起こされた息子は相当不機嫌だった。

でも、先生の診察室は部屋を暗くすると、花火があがり、ベイマックスが褒めてくれ、ラプンツェルが喋る。どうにかこうにか落ち着いたところで、説明が始まった。

検査では色んな数値が出ていたが、右目は0.5から1に収まっている中、左目は2.5から3.5。普通じゃないことはパッと見でもわかった。

とりあえず遠視と乱視が強いこと、でも今はまだ発達途上だから、これからどうなるか分からないこと、眼鏡で矯正できる部分もある(どうしようもない部分もある)ことは説明があった。

改めてしっかり見ても、左目は明らかに白が強く、まずは「視神経に出来た腫瘍によって圧迫されている状態なのかどうか」を判別するために、頭部のMRIを撮るよう勧められた。

もしそこに腫瘍があるなら、心臓の手術よりも先にそっちの手術を受けなければいけないと言われ、正直どうして良いか分からなかった。

 

何しろ、その時点で8月末。既に先週カテーテル検査を終え、「肺の状況を考えると、出来るだけ早く手術した方が良いから、術前説明とリスト入りを早めます」と言われたばかりだった。とにかく早くMRIを、と言われ、完全にパニック。

しかも、息子が通っている県外の病院には眼科がない。

仕方ないので、緊急搬送先になっている、2回しか行ったことのない大学病院宛に紹介状を書いてもらい、三日後に予約をとった。

 

予約をとったあと、仕事中の旦那に泣きながら電話をした。

心臓のことの方がよっぽどショッキングなことを言われているのに、新しいことが出てくるとまた泣いてしまう。

弱い母だけど、とりあえず前に進まねばならない。

病児の親はそんなことばかりだ。

 

大学病院初診

小児科の診察室前には大きなプレイスペースがあったが、こちらには当然ながら無い。

子どもはいなかった。

それもそのはずで、1時間半ほど待って呼ばれたところで、若い女性の医師に、「小児の眼科は月に1回しかありません」と言われた。

いやいや。

予約の時に「赤ちゃんなんですが」って言うたよ。「大丈夫ですよ!」って朗らかに言われたよ!!!

 

しかもその眼科医さん、寝てる息子に明るいライトを思いっきり当てて、びっくりして起きた息子の目をさらに照らす。泣き出す息子。

「見えませんね、とりあえず緊急性が無いかどうかだけ見ますね」

と言って、嫌がる息子をぐるぐる巻きに拘束する眼科医。泣きわめく息子。押さえつける看護師。外に出される母。

カルチャーショックだった。

泣かせぬよう丁寧に関わってくれる、かかりつけの病院全てに感謝した瞬間だった。

 

しかも、とりあえず腫瘍では無さそうだけど、来週の小児眼科でみてもらいましょうと言われて、余計にショックだった。

今回のこれは。意味があったんでしょうか。

しかも、「私毎回小児眼科の外来に入らせてもらってるんで」って言われた。

小児眼科もこんな感じなんでしょうか。

MRIについては「小児科の協力も必要ですのでうんぬんかんぬん」ということで、ぼかされて終わった。

まさかの収穫なし。メンタル抉られて帰宅。

つらい。

また泣いて電話した。

ごめんなさいほんとに。昼休みだったから許して。

 

 

大学病院小児眼科初診(?)

同じでした。拘束して目の中を覗く。

目薬3回が追加されたので、余計に息子は暴れて泣いた。

むりやり開かされて、赤くなった目の周りが痛々しくて、申し訳なかった。

 

結果は、

萎縮はあるが生まれつきのものに見える

少なくとも腫瘍は無いと思う

MRI撮っても良いけど治療法はないし、眼鏡矯正しても効果はない

左目の視力は今ほとんど見えていない。これから先、悪くなることはあっても良くなることはない

 

往復ビンタされてる気分でそれを聞き、せめてMRIのお願いだけでもして帰ろうと思ったが、

うちではMRIは撮れませんとのこと。

 

「小児科の助けが必要になりますし、順番待ちでいつになるか分からない。腫瘍じゃなさそうだし、心臓手術後にゆっくり考えてもらって、撮りたいなら大きなこども病院を紹介する」

 

ええ…(´・ω・`)

紹介状も今日は書けないから手術後に来て、と言われて、とりあえず帰る。

困った。とりあえず最初の眼科に行ってみよう。(ふりだしにもどる)

 

 

個人病院眼科(3回目)

謝られた。一歳すぎてたら何されたか覚えてるよねーって労われた。

ええ、歯科検診の歯磨き指導と、眼科の固定が相当嫌だったらしく、あれ以来歯ブラシのために仰向け固定するとギャン泣きです…_(:3 」∠)_

 

先生としては、念のためMRIを心臓手術前に受けて心配要素をなくしておいた方が良い、という意見は変わらず。MRIの画像さえあれば診てくれるとのことだったため、いつもお世話になっている病院の循環器外来で、MRIだけどうにかお願いしてみることにした。

 

 

子ども病院循環器外来

 いつもお世話になっております。

循環器主治医にお願いしたところ、どうにかNICUの枠をもらってねじ込んでみると言われて一安心。

循環器主治医はとても仕事が早い。

書類を頼めば10日程度で返ってくるし、忘れられることはない。実際その時も次の日に連絡があって、次週の予約を取ってくれていた。ありがとうございます。

 

朝イチの検査のため、前日夜からお泊まりし、次の日の昼には退院。

1番だと予定時間にズレが無くてとても助かる。今回も病棟看護師さんたちにはお世話になりました。

 

 

 

個人病院眼科(4回目)

眼科からデータが届いたとの連絡を受けて、とりあえず眼科へ。

朝電話したら、「まだ届いてないです」って言われて、「え、そんな、検査した日に送っときますって言ってたのに」と思ってたら、どうも郵便で届くものらしい。

アナログな世界だ…。

 

検査のあと何も言われなかったから大丈夫なんだろうとは思ってたけど、特に何もなかったと説明されてひと安心。 

見せてもらうと、確かに視神経は細かった。

これが生まれつきなのか、生まれてから何かが起こって、その末の焼け野原なのかは分からないんだそうだ。

 

これ以上のことはここでも出来ないため、県内で1番大きい子ども病院に紹介状を出してくれるとのこと。そこでは偉い先生が、再生医療の研究もしているらしい。

ついでにMRIデータももらえたので家で見れるようになった。動作確認がWindowsXPVista、7って書いてあった。古い病院はこれだから…。

 

 

現在

結局、1ヶ月走り回った結果、「腫瘍はなかった。この先はどうなるかわからない。」という結論で終わった。

でも、ひとまず安心して心臓手術に臨むことが出来る。それはよかったなと思う。除外診断はとても大事。

病院の規模、設備、経験、専門性、先生の専門性と、それぞれ違う診察をしてもらって、今回はいろんな学びがあった。

病院ごとに得意分野は違うし、設備も違うから出来ることも違う。

1つの病院で対応してくれなかった、たらい回しにされたという考え方もあるかもしれないけど、正直、息子のような眼の状態に1番詳しい先生に診てもらいたいので、行き着くところまで行きたいなと思った←

今回は「県内で1番大きいこども病院」にたどり着いた。少しでも改善方向に進みますように。お願いします。

 

その前にまずは根治手術の手術室に息子を送り届けないといけない。火曜日が終わって、来週の月曜日まであと少し。長くて短いあと少し…。