フォンタン覚書
主治医の先生から色々なことを聞いたので、忘れないように。
先生もかなり噛み砕いてくださっていると思うし、私と夫は医療関係者では無いので、間違っていたりニュアンスが違うこともあるかもしれません。もしあったら教えてください。
<前提>
息子は多脾症候群という病気を持っていて、それに伴って心疾患を持っています。
肺動脈閉鎖、下大静脈欠損&奇静脈結合、機能的単心室、単心房、右胸心という、とてもカスタマイズされた心臓です。
そのため、肺動脈を作るため1ヶ月の時にシャント術、6ヶ月にグレン手術(下大静脈欠損、奇静脈結合なので、正確にはTCPS)をしています。今は7ヶ月で、グレン手術後退院したところです。
1歳前後でフォンタン手術を予定しているため、退院前面談でフォンタンについてあれこれ聞いてきました。
ひとまず息子の心臓のことをもう少し説明しますね。
<奇静脈結合とは>
下大静脈がなかった場合に使うサブの血管です。
本来は細い血管ですが、息子の場合は、下半身+肝臓以外の内臓を通った血管が全部集まるので、結構太めです。
肝臓を通った血液は、肝静脈を通って直接心臓に流れています。
この奇静脈と下大静脈の1番の違いは、「奇静脈が上大静脈に繋がっていること」です。これが普通のフォンタンと息子のフォンタンの、かなり大きな分かれ道になります。
<フォンタンまでの道のり>
というのも、本来であれば、
グレン手術で上大静脈と肺動脈を繋げる
フォンタン手術で下大静脈と肺動脈を繋げる
という段階を踏みます。
息子の場合は、下大静脈が無いため、
グレン手術で上大静脈+奇静脈と肺動脈を繋げる
フォンタン手術で肝臓の血管を繋げる
ということになり、グレン手術がメインの手術になります。
サチュレーションも、グレン手術の時点で85-90程度になると言われていました。
<グレン手術の術前説明>
本来のグレンであれば肺:心臓の血流量は6:4から5:5程度ですが、息子の場合、グレンの時点で、肺:心臓の血流量は8:2程度になります。
グレンの時点で循環がかなり変わるので、このグレン循環に適応することが出来れば、次のフォンタン循環にも適応は難しくないと言われました。
というか、後述の肺動静脈瘻の都合、グレンが成功した場合、フォンタン循環にすることは必須なので、グレン循環止まりということは基本無いんだそうです。
(血管のつながり方によって、個人差あると思います。息子の場合はこうでした。)
<グレン手術の結果と課題>
グレン手術の際には、シャントを取った後の繋ぎ目を、そのまま肺動脈に繋ぐという方法をとりました。
その結果、予定通り肝静脈は心臓へ、それ以外の血管は全て肺へ流れています。グレン循環に身体は適応しており、肺高血圧などもありません。サチュレーションは酸素なしで85-90なので、予測通りの値です。
ただ、肺の血の流れやすさに左右差があります。片方の肺の入口が少し傾斜がついていて、流れにくくなっている状態なんだそうです。肺シンチグラフィー(左右の血の量を見られる検査)の結果を見ると、7:3くらいでした。
これが1つ目の課題です。左右差があると、流れにくい方の肺の血管が育ちにくいので、左右差はあまり良くないのだそうです。
もうひとつの課題、それが先述した肺動静脈瘻です。
<肺動静脈瘻>
次のフォンタンでは、肝臓を通る血管を繋げるだけ、なんですが、「肝臓を通った血」というのが大切な役目を持っているらしく、ただ繋げるだけでは足りないんだそうです。
「肺動静脈瘻」ってご存じですか?
すごく簡単に言ってしまえば、肺胞を飛び越えて動脈と静脈が繋がってしまい、酸素の交換をしないままに血が巡ってしまう状態です。
それがたくさんあると、綺麗な血にならないので、フォンタンをしてもサチュレーションは上がらなくなってしまいます。
肝臓を通った血は、この肺動静脈瘻を作らないようにする物質が入っている、と言われているそうです。(まだ機序は不明なんだそうで)
1歳前後という早いタイミングで息子がフォンタンを受ける理由はこれです。肺動静脈瘻がたくさん出来る前に肝臓の血を合流させたいからです。
また、この血が左右両方に行き渡らないと、どっちかだけに肺動静脈瘻が出来てしまうので、うまいこと繋げる必要があるそうです。
<フォンタンでやること>
そのため、次回のフォンタンでは、
*肺に流れる血の左右差を無くす
*肝臓から来た血を、左右両方の肺に均等に流す
ことが必要になります。
<考えられるフォンタンの方法>
息子の場合、3種類の方法を検討しています。
これは病院によって、血管の繋がり方、肺の血圧などによって選択肢が変わるのかもしれません。というか、普通はこんなに選択肢ないのかも?
①肝静脈に人工血管を繋げ、それを肺動脈に繋げる手法
1.心臓の中を通さないルート
2.心臓の中を通すルート
②肝静脈と奇静脈を繋げる手法
(③右心房と肺動脈を繋げる手法→これは一応存在するけど選択肢にはないと言われました)
実質3つです。
上から説明すると、まず
①-1.人工血管を使って、心臓の中を通さないルート
心臓をぐるっと迂回して、肺動脈に繋げます。
息子の場合、道のりがかなり複雑で、難度も上がるため、あまり現実的ではなく、可能性としては低めとのこと。
正直これを期待してたんですが、ばっさりでした。右側に心臓があることも影響してるのかな…。
今は一般的にはこの方法を使うと思うので、これがまず消えてる時点で一般的では無いですね…笑
①-2.人工血管を使って、心臓の中を通すルート
心臓を迂回しなくて良いため、最短距離で血管を通すことが出来る。
ネットで見ると、手術後不整脈が出やすいみたいな情報もあって不安なんですが、主治医としてはこの選択肢で今は検討しているとのこと。
人工血管の取替が必要なのでは、と心配だったのですが、肝臓の血だけなので量が少なく、身体がすごく大きくならなければ大丈夫なのではとのこと。うーん。。
②奇静脈と肝静脈を繋げる手法
奇静脈は既に肺に繋がっているので、ここと合流させてしまう方法。心臓を触らないので、これも親としては少し安心。
ただ、奇静脈はアミダクジのような形になっていて、身体の左側を通っている箇所と、右側を通っている箇所があるのだそうです。
肝静脈があるのは左側なので、奇静脈の流れが左に来ないと繋げることが出来ません。
息子の場合はその奇静脈と肝静脈が近くなる場所がかなり上の方で、心臓近くまで来てしまうらしく、血管も入り組んでいるので難度が上がるのだとか。
またカテーテルの結果なども踏まえて、どれが良いかを選択していくそうですが、親心としては、心臓を開かずにいってほしいな…。難しいかな。。
<その他>
左右差を埋めるため、血管を繋げる角度を計算する、肺動脈の形を整えるといった事も検討しているそうです。
これを1歳の小さな心臓と細い血管に対してやるのですから、心臓外科の先生方には頭が上がりません。
まとめてみると、「息子だから」という所が多く、かなり特殊なケースだと思います。そもそも、下大静脈がある子の場合はこんなに選択肢がないのかも知れません…。
ひとまず、覚書ということで、素っ気ないですがここまで。
また思い出したことがあれば書き加えます。